「オリエントの舌」

藤本和子

「オリエントの舌」書籍情報

「オリエントの舌」

藤本和子

オリエントの舌――言語としての料理

 砂漠の教室の過程を修了して外へ出て行く日を心待ちにした理由の一つは、シュニツェルの日々に終止符が打たれ、もう少し人間らしい食べものに出会える機会があるだろうということだった。出会いを楽しみにしていたのは、非ヨーロッパ系の人々が「オリエンタル」と呼ぶところの中東料理である。中東の料理といっても、当初は漠然とイスラエルのユダヤ人の料理、アラブ人の料理、イエメン系のユダヤ人の特別料理というように、きわめて曖昧模糊とした先入観で思い描いていたのだった。中東と呼ばれる地域のそ